私の母親は84歳で亡くなった。
年齢的にはまあまあ普通なんだろうと思う。
その母親は80歳を過ぎた頃から入院することが多くなっていた。
入院と言っても、大抵は1ヶ月以内で、風邪だの熱だの
いろいろあった。
その母親が言ったことだが
「入院してるとねえ、お嫁さんってお見舞いに来ないのよね。
息子と孫は見舞いに来るんだけど、お嫁さんのお見舞いは見たことない」
病院も、入院にあたっては、大部屋に同じくらいの女性を集めて入れる。
そうすると、母と同じくらいの年来の女性が4人一緒にいるわけだ。
私は一人っ子なので、母の見舞いは毎日行っていた。
男兄弟がいないから、母にとってはお嫁さん、という存在がない。
だから、入院生活で見聞きしたお嫁さんのことが新鮮だったのだろう。
勿論、ひんぱんに義母の見舞いにくるお嫁さんは存在すると思う。
だが、母が10回ほど入院した時には、お嫁さんの見舞いは皆無だったらしい。
それでいろいろ感じることがあったのだと思う。
父が入院した時もそうだった。
父は88歳で失くなったのだが、80代になって入院することが増えた。
私は父と顔が似ていない、そのせいだと思うのだが
父が入院するたびに、医師と看護婦さんに聞かれた。
「お嫁さんですか?」
お嫁さん、というのは父の息子の妻、という意味だ。
それで私が「いいえ、娘です」
と、答えると、医師も看護師も心底ほっとした顔をするのだ。
父と母の入院でしみじみと思ったことは
「老夫婦はお嫁さんに頼ってはいけない」
ということだ。
当然だが、老夫婦の面倒をよく見てくれる嫁さんはいると思う。
ただ、そういう方は数が少ない。
年を取ったら、お金で他人に面倒を見てもらったほうが確実だと思う。
子供の教育費までは、ちゃんと出そう。
だが、その後の結婚だ、出産だ、新築だ、ということにあまり金を掛けないほうがいいと思う。孫はかわいいと思うが出費は手加減しよう。
ちゃんとお金は残しておいて、自分が年をとって身体が効かなくなったら
いろいろお願いできるヘルパーさんとか、便利屋さんの費用に当てよう。
その方が自分にとってっても、お嫁さんにとっても良いと思う。: